2018年2月4日 小松式高麗手指鍼研究科ブログ by天野先生
2月4日こまつ式高麗手指鍼研究科のセミナーがありました。
集まった鍼灸師の先生方は東京都だけでなく、埼玉県、愛知県、三重県と遠方からも参加されました。総勢11名でとても講義内容の濃い、鍼灸師の個性も濃い有意義な時間を共有する事ができました。
section1
まずは、恒例の質問の時間です。ここでは、普段の臨床で遭遇した難しい問題や、経営についての事、あるいは鍼灸業界の事、医療業界の事、今話題の時事ネタまで何でも質問してご意見をいただけます。
質問内容の一部を紹介致します。
質問1
刺激過敏の頚椎症の女性に前回習った、こまつ式複合治療をしたら症状を悪化させてしまった。刺激量が多かったせいか?
アドバイス1
刺鍼技術が未熟なために、刺鍼時間が長くかかりすぎてないか。
アドバイス2
刺激過敏な細い女性で特に初診時や、鍼灸治療が初めての患者さんには、鍼の太さは0番か1番を使った方が良い。その後少しづつ効果を見ながら太さを増やしていく。
アドバイス3
頚部の鍼灸治療は特にリスキーな治療である事を意識して治療する事が大切である。
アドバイス4
神経過敏の患者さんには、頚部は置鍼だけにとどめる。又はやらない。肩上部にはパルス治療しても良い。
アドバイス5
希少まれな神経過敏の患者さんに対しての痛くない鍼灸技術を学ぶよりは万人に効果のある鍼灸技術を身につける事が大切。
質問2
三焦経を使う頻度が少ないのは何故か?
アドバイス1
心包経にも共通する事だが、実質臓器ではないから。
アドバイス2
舎岩五行鍼では耳鳴りの治療で用いる。
アドバイス3
リウマチの治療で用いる。
治療の順番として、小腸経→三焦経→小腸経
質問3
ホームページに記載する内容について、どのように作るべきか?
アドバイス1
集客方法には2種類ある。
一つ目は、多くの人に見てもらえるようにする事。
二つ目は、見た人が実際に治療を受けてみたいと思う内容にする事。
アドバイス2
業界の知識として、よく言われる事は、100人みて1人来るようです。
質問4
手指鍼の治療をパーキンソン病に対して行い、体鍼は膝関節痛の治療を同時に行った場合、両方に効果があるか?
アドバイス1
効果はゼロでは無いが、効きは悪くなる。
一疾患に対して一つの治療をしたほうが効果が高い。治療する上で最も大切な意識を集中して治療する事が出きるから。
アドバイス2
2つの疾患を治療する場合は、
①時間をずらす
②日にちをずらす
section2
腎臓病に対する治療法の講義がありました。
①急性期
②慢性期
③透析患者
④移植患者
の4つに分けて、再現性の高い処方を体系化しています。
①急性期
1CKD患者は除く
2主に糸球体腎炎等の患者でステロイドを服用している場合
腎熱方、腎勝方を用いる。
3クレアチニンの数値は1点台が多い。しかし数値が低くても簡単ではない。
4主たる五治処方は、腎
腎熱方(3回程度)→腎勝方→腎正方
5血圧に問題があれば、心勝方
6血圧に問題が無く蛋白が出ていれば、心正方
7血圧に問題があり蛋白が出ていれば、左右の手に分けて心正方心勝方
血圧が低いのに蛋白がでている場合予後が悪い
8潜血は少量であれば治療は必要が無い。
大量の場合は左側に腎勝方右側に腎正方が多い。
②慢性期多くの腎不全患者
1主にクレアチニンが2点台を越えたもの
2主たる五治処方は腎正方、時に腎勝方
3従となる五治処方は、その時その時の症状によって優先順位を常に考え
なければならない。
高血圧 心勝方
貧血 肝正方
免疫力を上げる 脾正方
尿毒症 大腸勝方
風邪 肺熱方 肺勝方 肺正方
③透析患者
1治療の最大の目的は、腎不全の合併症を予防する事
2透析治療を受ける事による起こる、不定愁訴を改善する事
④移植患者
1生着率の向上を目指す
2通常の腎もJ21の場所ではなく、多鍼場所を移す。
詳しい場所は、是非セミナーに参加して勉強してください。
3脾正方は入れてはいけない。
理由は、是非セミナーに参加して勉強してください。
section3
架空の患者さんを実際治療した場合どのように治療するかをシュミレーションしました。
①性別 男性
②年齢 54才
③病名 糖尿病性腎症
④血圧 160 95
⑤体質 右腎実質 左腎実質
⑥CRE 4、6
⑦BUN 78
⑧UA 8、5
⑨Hb 9、8
⑩Hb1Ac 7、8
⑪運動 糖尿病改善の為、週3回プールを歩く。トレッドミル
⑫食事 週3回は外食の習慣がある。
⑬自覚症状 1右目網膜症 2アンモニア臭 3皮膚の掻痒感
⑭インスリン 受けてない
以上の条件下で実際治療をするとしたら
①主たる五治処方は何を選ぶか?
②従たる五治処方は、どの症状に何を選ぶか?
③運動はやってよいか?
④治療の間隔はどのくらい必要か?
⑤治療の効果が現れるためにはどのくらい期間は必要か?
⑥外食の習慣で大切な事は何か?
⑦何を優先に治療するべきか?
⑧何を伝えなければならないか?
⑨治療の目的は何か?
⑩予後はどうか?
一人一人参加した先生に問診形式で発表していただきました。
こまつ先生は、患者の立場になって問答しました。
時に厳しく、そしてユーモアたっぷりな問答のやりとりは実践さながらでとても勉強になりました。
最も大切な事は、クレアチンの数値がこまつ式高麗手指鍼によってさがる事は、腎不全が治る訳では無い事です。つまり治す治療では無い事。透析を一日でも遅延させる事が目的の治療である事。そして遅延させる事が患者さんの寿命を伸ばす事に繋がる尊い治療である事。
忘れてはなりません。
section4
最後に二人ペアーになってもらい、陰陽比較脈診と腹診を診て三一体質と陰症陽症を調べシュミレーションした五治処方と体鍼を打ち合いました。
五治処方は正しい位置にあるか?多鍼部位は正しい位置か?本数は少なくないか?など細かい指導をこまつ先生が懇切丁寧に指導してくださいました。
感想
今回も時間が経過した事を忘れてしまう程、熱中した濃厚な講義でした。
鍼灸師による鍼灸治療の受療率は4%程度と言われています。
せっかく苦労して取得した国家資格が仕事が出来ず、無駄に終わってしまうような低い受療率です。
しかしこまつ式高麗手指鍼及び、こまつ式複合治療は違います。鍼灸師の先生を待ってる患者さんが沢山います。その誰かや何かの為に一緒に勉強してみませんか?お待ちしています。